1919年(大正8年)に、山本実彦氏が創業した出版社「改造社」の社屋だった「改造社ビル」。昭和初期に建てられたユニークなビルのノスタルジー。

気になるスポット

都営地下鉄 浅草線、東京メトロ 日比谷線「東銀座駅」A1出入口を出ます。「東銀座駅」と言えば「歌舞伎座」で有名ですが、この辺りには、色々な昭和史が詰まっています。

例えば、2014年(平成26年)まで日本で最古の地下街と言われた「三原橋地下街」があったこと…。

それは太平洋戦争の空襲で焼け野原になった銀座一帯の瓦礫を、銀座を流れていた「三十間堀川」に埋め立てて処理する際に、ここに架かっていた「三原橋」を利用して作られました。橋梁のアーチ部分を天井として作られた珍しい構造の地下街です。

近年、その耐震性に問題があることから取り壊しが決まり、映画館「銀座シネパトス」が2013年(平成25年)に閉館、「三原カレーコーナー」が2014年(平成26年)に閉店したのを最後に閉鎖されました。これによって日本最古の地下街は「三原橋地下街」から「浅草地下街」になりました。


三原橋交差点を渡ると、左手には1889年(明治22年)に開場した「歌舞伎座」があります。


現在は2013年(平成25年)に竣工した「歌舞伎座タワー」と呼ばれる、高さ145メートル、地下4階・地上29階の超高層の建物になっています。


そして、三原橋交差点を右に曲がって、ほどなく歩いた所に「改造社ビル」があります。このビルは元は「改造社(かいぞうしゃ)」の社屋でした。昭和初期に建てられたと思われる老朽化したビルです。非常にユニークなのは、1つのビルなのに、真ん中から左と右で修繕などの形跡が違う点です。

なぜ、このようになっているのか定かではありませんが、真ん中に残る金属のパーツを見ていると、もしやこれは看板を取り付けるための名残りで、かつて左右それぞれの階に様々なテナントが入っていた時期があったのでしょうか?


「改造社」は1919年(大正8年)に、山本実彦(やまもとさねひこ)氏が創業し、様々な論評を数多く掲げた総合雑誌「改造」を出版していた昭和中期まで続いた出版社です。1923年(大正12年)に関東大震災の影響で倒産寸前だった「改造社」は、一冊一円、月一冊配本の「日本文学全集」を全巻予約制で販売することで、その予約金を出版資金にし倒産を免れるのでした。

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それは一冊一円なので「円本(えんぽん)」と呼ばれ、当時のサラリーマンに受け「円本ブーム」を引き起こしました。一冊一円とはいえ、当時のサラリーマンの給与からすると結構な金額だったようですが、それでも、従来の「本」よりも安かったのです。

また、「改造社」は当時イギリスの著名な論理学者バートランド・ラッセルやアインシュタインなどを日本に招き話題を呼んだことでも知られています。


「改造社」は現在、改造社書店、改造図書出版販売株式会社として、この「改造社ビル」を含め複数の店舗で、書籍の販売を営んでいます。

歌舞伎座を訪れたら、そう遠くない場所にある昭和初期のノスタルジックなビル「改造社ビル」も併せて見ておくのもいいかもしれません。

改造社ビル
〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目13−18